失格の暗殺者



封印開放の旅も最後の封印ひとつとなり、しいなとコレットが互いの世界を守る為ならば戦う事も辞さないと意思表示したその夜。
ちょうど寝ずの番の担当だったしいなは、極めて居心地の悪い時間を過ごしていた。
というのも、共に起きているのがクラトスだったからだ。
皆の前で自分の立場を再認識した以上、どことなくぎこちなくなっている彼女である。
こんな時優しく声をかけられたり、あるいは逆に言葉の端々に露骨な警戒心を感じられたりすれば自身の立ち位置を決める事も出来ただろう。
しかしクラトスは、もう何時間も黙ったままである。
時折焚き火に薪をくべる以外は身じろぎ一つしないでいる。
彼には、間が持たないなどといった単語は意味をなさないようだ。
やっぱりあそこまで言わない方が良かったかねぇ?
コレットだって立場ってものがあるだろうし……ってそれはあたしもか。
結局しいなは、仕方なく一人悶々と先程の事を考え続けていたのだ。
そのせいだろう。
「……暗殺者、としては失格なのだろうな……」
唐突ではあるがごく自然に話し掛けてきたクラトスの言葉を、しいなはしばらく自分の独白と勘違いしていた。
「……へ?誰の……事だい?」
「……お前の事だが」
それまでじっと焚き火を見つめていたクラトスは、間の抜けた返事をするしいなの方を向く。
「そんな事はないさ!もし2つの世界を同時に救う方法がなかったら、その時は、あたしはコレットを!!」
「いや、それ以前の問題だ。こうして暗殺対象やその仲間と馴れ合いながら寝首をかくでもなく、まして、襲いかかるとしたらいつか、という事まで事前に予告する……」
反論しようとするしいなに、彼女自身自覚している点を上げ連ねるクラトス。
「最初は、不審なところを見せれば即座に斬り捨てるつもりで監視していたが……」
そこまで言うと、クラトスの肩が小刻みに震える。
よく見ると頬のあたりもわずかにヒクヒク痙攣している。
どうも笑いを堪えているらしい。
「な、なな、なにがおかしいんだいっ!!」
しいなが真赤になってクラトスに飛びかかるが、羞恥と怒りに足がもつれ、勢い余って態勢を崩してしまい地面にベチリと倒れてしまう。
「……ドジで、単純で、邪気が感じられない。私でなくとも、これでは神子を殺せないと判断するだろう」
倒れた彼女に手を貸し立ち上がらせる。
「確かに暗殺者としては失格だ……だが、そこがお前の魅力でもある」
クラトスは、顔から火を噴きそうなほど恥ずかしがっているしいなをそっと抱き寄せる。
「え?」
ふわ、と優しく抱き寄せられただけなのに、しいなはピクリとも動けない。
顔立ちの整った好青年に見える顔が、すぐ目と鼻の先に近づく。
「こういうふうに唐突なのはいや、か?」
彼女の頬に軽く手を添えながら、クラトスは尋ねる。
「え?ええっ!?こういうふうに……って、そんな、あの」
しいなは自分の心臓が、口から飛び出しそうに思えるほどバクバクと脈打っているのに気付く。
まさかあのクラトスが?
しかも、あたしにこんな!?
彼女がテンパッている間に、クラトスは彼女にキスをする。
彼女はされるがままに大人しくじっと唇を重ね合わせ、しばらくすると今度は唇同士を擦り合わせ、次第に互いの口内へと舌を伸ばし吸い求める。
舌先でくすぐり合い、絡み合い、混ざり合った唾液を彼女の細い喉がコクコクと動いて嚥下する。
唇が離れると、唾液が銀糸となって二人をつなぎとめようとする。
そのまま、クラトスはすっかり上気した彼女の頬から首筋へと舌を這わせ、耳へと移動しながら着ている物を脱がせ出す。
「ちょっ、ちょっと、いきなりそんな、っぅく」
しいなは急展開でそんな事をしだすクラトスに抵抗しようとするが、胸を揉まれ耳たぶを甘噛みされ、体が敏感に反応してしまい上手く暴れる事も出来ない。
鷲掴むように荒々しく乳房を揉まれ首や耳を這う熱くヌメヌメした感触を感じながら、彼女は喘ぐように自分の喉が鳴るのを抑えられなかった。
一方クラトスは愛撫を続けながらもマントを外して地面に敷き、その上に彼女を横たわらせる。
穿いているものをするすると脱がせ、秘部に指をあてがう。
クニクニと全体を指で押し触り、その内の一本がクリトリスを刺激する。
人差し指と薬指で秘部を押し広げ、ジットリと溢れる愛液を掬うようにしてその入り口を愛撫し、トロトロに濡れたその指でまたクリトリスを弄ぶ。
「やぁ、そ、なこと、んんっ、やはっ、くぅ」
未だ味わった事のない他者からの愛撫にビクビクと全身を震わせ、しいなは甘い声を漏らす。
逃げるように大の字に伸びた両手はマントを強く掴み、突き抜けるような快感の波に呑まれないよう耐えている。
クラトスは震える度に揺れる乳房に空いた片手を伸ばして撫でるように触りながら、その先端に口をつけ乳首をチロチロと舌でくすぐる。
ぬるぬるに濡れた指でクリトリスを執拗に弄られ、彼女の胸に半ばうずまるようにして一心に愛撫するクラトスの表情を眺め、彼女はこみ上げる快感に身を任せる。
「……っ!」
声もなく、体を強張らせるしいな。
ビクッ、ビクッ、と大きく全身を震わせた後、彼女はグッタリとなる。
片手を目の上に乗せて荒く息をする彼女を見ながら、クラトスは自身のペニスを露わにする。
天を衝かんと勃起したモノを秘部へと近づけ、体の力を抜ききったままこちらを見ていない彼女の中へズブズブと挿入する。
「ひぁ!?な、ぅああぁうぁ、こ、れって、っあ!」
偶然か一度達して心身共に弛緩していたのが良かったのか、彼女は一切苦痛を感じることもなく初めてのペニスを根元まで受け入れる。
「くぁ、なか、が……あ、つ……」
「どうした?気持ちいいのか?」
うわ言のようにボソボソと何か呟くしいなに、クラトスが声をかける。
「すご、おちんちん、熱くてっ、あたしもう!」
かろうじて答えると、しいなはクラトスが動き出すのも待たずに自分で腰を振りはじめる。
「ふ……まあ、苦痛でないだけよかろう」
クラトスも、彼女に合わせて腰を動かし始める。
「やは、ん、い、やん、あはっ、気持ちいいよぉ、あはっ、んんっ!」
怒張したペニスが彼女の中を幾度も幾度も擦り上げ、その度に彼女が仔猫のような啼き声をあげる。
カリを残してペニスをズルズルと引き抜くと愛液がポタポタとマントに零れ落ち、一気に突き上げると呻き声をあげて彼女が体を仰け反らせる。
そして自分の声が大きい事に気付いたか、唇を噛み閉ざして喘ぎ声をおさえようとする。
「んんっ、んっ、んふっ、ぅう」
顔を真っ赤にして声を上げるのを堪える彼女の耳に、クラトスは顔を近づける。
「声が気になるか、しいな?」
両目を強く閉じ、快楽に呑まれながら、彼女はなんとか頷く。
「そうか。もし誰かにお前の喘ぎが聞かれていたらどうだ?」
今度は彼女は答えない。
が、それに代わって彼女の秘部が一段強くペニスを締め付ける。
クラトスは口の端を少し上げて笑う。
「ふ。どうやら忘れているようだな。今、コレットの体は天使に近づいている」
そう囁きながら彼女の体を抱きしめ、クラトスは一層激しく彼女を突き上げだす。
「夜はほとんど眠る事無く、聴覚は鋭敏になっている」
うっ!?」
しいなは口を閉ざしたまま何事か叫び、目を見開く。
「もしかすると、今の声すら聞こえているかも知れんな?」
「ぅあっ、らめぇ、そんな、あたしっ!!」
爪を立ててクラトスを強く抱きしめ、彼女の秘部がきゅうぅと締まる。
「くっ!イくぞっ!!」
ドプッ、ドクドクッ、ピュブッ
クラトスが声を荒げ、彼女の中にありったけの精液を吐き出す。
「っ、あぁぁ、精液が、あたしの中、に、いっぱい……」
ヒクッ、ヒクッと痙攣したように体を震わせ、しいなは恍惚とした表情で意識を失った……



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