シュレディンガーの猫娘



「お前は……本当にクレアなんだな……」
ヴェイグがボソリと呟く。
アガーテの姿をしたクレア。
月のフォルスで心が入れ替わったと言われても、彼はずっと信じきれなかった。
だが、彼女の言動を見ているとどうしてもそれを否定しきれなくなる。
「ヴェイグ……」
クレアが心配そうに呼びかける。
クレア?
本当にクレアなのか?
たとえ心がクレアでも、ガジュマの体を持ったものがクレアと呼べるのか?
いや。
まだ、心が入れ替わったという事すら完全に決まったわけじゃない。
クレアとアガーテ。
目の前にいる彼女は、絶対にそのどちらかの筈。
ヴェイグの心の中で、アガーテとクレアの姿が現れては揺らぎ、揺らいでは消えてゆく。
確率でみれば2分の1……だが俺は……。
「……いや、なんでもない」
ヴェイグは頭を振り、考えるのを中断する。
本当にクレアかも知れない彼女の前で、露骨に苦悩している姿を見せる訳にはいかない。
「…………」
歩き出すヴェイグの背中を見送り、クレアはじっと何かを考えこんだ……。

宿屋の薄汚れた天井を睨みつけながら、ヴェイグがため息をつく。
ここのところ、クレアの事が気になって眠れないのだ。
以前クレアがさらわれた時は、ただガムシャラに助け出そうと足掻く事が出来た。
しかし今回はそれすらも出来ない。
現状ではベッドの上でただ悶々としているくらいしかないのだ。
もう一度大きくため息をついた時、ヴェイグは部屋のそとに気配を感じる。
「……ヴェイグ……起きてる……?」
気付かれたのを察したのか、部屋の外の人物が声をかけてくる。
「ア……クレア……か」
クレアの声と気付き、ヴェイグは起き上がって部屋の扉を開ける。
「こんな時間にごめんなさい」
扉を開けるとすぐ、クレアが謝る。
「……いや……それよりどうかしたのか?」
「うん……最近ヴェイグが悩んでるみたいだったから、ちょっと気になって……部屋の中に入っていい?」
「……ああ」
ヴェイグはクレアを部屋に入れ、扉を閉める。
「……どうしてこんな夜更けに、わざわざ……っ!?」
扉に鍵を閉め、話しながら振り返ったヴェイグの唇がクレアの唇に塞がれる。
硬直し、瞬きひとつできないヴェイグの顔を両の掌で包み込み、クレアは慈しむように優しく頬を撫でる。
「ク……レア……?」
ようやくキスから開放され、ヴェイグは呆然としながら彼女の名前を呟く。
「ヴェイグ……じっとしてて」
小さな声でそれだけ言うとクレアはヴェイグに抱きつき、彼の股間へスルスルと手をのばす。
「……違うっ!!」
突然大声で叫び、ヴェイグはクレアを突き放す。
「クレアは……俺達は家族同然の付き合いなんだ!こんな事をする筈がない……お前は……お前はアガーテなんだな……」
「やっぱり私の事で悩んでいたのね……ねえ聞いて、ヴェイグ」
クレアは、もう一度ヴェイグへと近づく。
「私の心は間違いなくクレアよ。でもあなたはきっと……私が元の体に戻れるまで悩み続けるわ」
クレアは再び、うな垂れているヴェイグを抱きしめる。
「ううん、今だって私の事をアガーテって言った……お願い、ヴェイグ……もう苦しまないで」
「……?」
クレアの言葉に何かを感じ、ヴェイグは顔をあげる。
「私の事、アガーテ様だって思っても構わない。でも……今だけ、私のわがままを聞いて……」
クレアは床にひざまずき、ヴェイグのズボンを脱がせる。
「……!?」
当惑しながらも、とりあえず素直に従うヴェイグ。
「あなたの心が苦しむのを、今の私ではどうする事も出来ないから……せめて、体だけでも……」
そう言って、露わになったペニスを頬張るクレア。
「……クレア……」
ヴェイグの目に、ぎこちなくも懸命に頭を動かすクレアが、アガーテの姿が何故かクレアの姿と被って映る。
合わせて、その一瞬前まで無反応だったペニスがみるみる屹立する。
「……あっ……ヴェイグ、そのまま楽にしていてね」
クレアは、頬張るのが難しいほどに怒張したペニスに口を当て、チュッ、チュッ、と軽くキスをしながら充分に唾液で濡れた舌を這わせる。
アガーテの体の、ザラザラとした感触の舌が亀頭を這いカリ首から裏をくすぐる。
茎を手でしごき、もう一方の手で陰嚢を優しく愛撫し、少し舌を這わせてはキスを浴びせる。
ヴェイグが体を強張らせ始めたのに気付くと、クレアはペニスの先端を咥え口内で舌をうねらせながら、ペニスを激しくしごきだす。
「っ!クレアッ!!」
ドプッ
叫び、予告なく彼女の咥内に射精するヴェイグ。
「んぅっ!?ぷあっ」
クレアは苦しそうにくぐもった声をあげ、ペニスから口を離す。
ビュプッ、ピュッ、ピュプッ
ペニスの先からは依然精液が噴き出し、彼女の顔が精液まみれになる。
「ん、ぅあ……」
顔中白濁に彩られたまま、口の端からこぼれようとする精液を小指で口内にすくうクレア。
ヴェイグは、ホワイトアウトしそうな意識をもち答えさせながら、そんな彼女を眺める。
ヒューマの目にも美しく見える、ガジュマの女王の顔が……俺の精液に、まみれている。
ズクン、と全身の血が疼いたような錯覚を感じながら、ヴェイグはふらふらと彼女に近づく。
口内の精液をコクッ、と飲み干し、近づくヴェイグに向かってクレアがかすかに微笑む。
「クレアッ!!」
ヴェイグはその場で強引に彼女を押し倒す。
床の上に押し付けられながら、クレアは未だ鎮まらないヴェイグのペニスに気付く。
そして当然彼の意図にも。
ゴテゴテしたドレスを無理矢理押し下げ、彼女の胸を露わにする。
片方の乳房に文字通り吸いつき、もう片方の乳房を荒々しく揉みしだきながら、焦れたような手つきで彼女の秘部へも手をのばす。
「いいよ、ヴェイグ……あなたの好きにして……」
彼女は目を閉じ、されるに身を任せる。
クレアの言葉がちゃんと届いたのかどうか。
ヴェイグは無心に胸を吸い続け、濡れていた彼女の秘部を指でこねまわす。
クリトリスを親指で擦りながら、中指を深々と彼女の中に侵入させる。
「んぅぁはっ」
クレアは体を反らせ、襲い来る快感に抗おうとする。
ガジュマの体のせいなのか、想像を絶するほど体が敏感に反応するのだ。
そんな事はお構いなしに、ヴェイグは彼女の中で指を暴れさせ、乳首に軽く歯をたてたり舌でくすぐったりとクレアの体を好き放題に弄ぶ。
「んっ、ぅく、うぁ、あ!」
床の上で何かを掴もうと彼女の掌が動き、クリトリスに刺激が来る度に痙攣しそうになる腰を必死で抑える。
口の端からはやけに粘質な唾液がツツ、と光る糸をひいて垂れ零れ、両膝はガクガクと震えている。
「っ、ぅあ、ぁは、やぁ、ふあぁっ!」
ヴェイグの指が一層激しく彼女の中で暴れると共に、クレアは快楽を抑えきれなくなる。
急にガバッと体を起こし、ヴェイグの上着をはだけさせ、逆に彼を床に押しつける。
「ほら……ヴェイグったらまた苦しそう……うふっ」
妖艶に笑い、彼女はヴェイグの上にまたがる。
べチョべチョに濡れた秘部にペニスをあて、ゆっくりと腰を下ろす。
「ぅあ、ん、ぁああぁっ!」
ペニスを根元まで完全にくわえ込み、彼女は喜悦に震え喘ぎ声をあげる。
ヴェイグの胸の上に両手をつき、クレアは腰を大きく前後にグラインドさせ始める。
「んんぅ、あはっ、ぁん、ヴェイグの、すっ、ご、んぁっ」
快感に任せた彼女の声が漏れ、腰が前後する度にクチュ、プチュッ、と愛液が卑猥な音を立てる。
彼女の中の秘肉は激しく波打ち、蕩かさんばかりの熱でペニスを包み込む。
ヴェイグも彼女の動きに合わせ、腰を突き上げだす。
「うぁっ、んぅっ、いい、よっ、すごい、気持ちっ、いいよぉ!」
ヴェイグの胸に爪をたて、腰を小刻みに激しく動かしだすクレア。
ニチュニチュと愛液が鳴り、彼女の体全体が何度も波打つ。
「……っあ!!」
タイミングを計ったヴェイグの大きな突き上げに、彼女は声を上げて大きくひとつ体を仰け反らせる。
絶頂に達した彼女の体がガクガクと揺れ、秘部が、キュウゥ、とペニスを強く締めつける。
「クレア、クレアクレアッ!!」
その締めつけに、何度も彼女の名を叫びながら射精するヴェイグ。
ドクドクと、クレアの体内に精液が吐き出される。
二人はそのまま身を寄せ合い、ゆっくり、健やかな眠りへと誘われた……



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