「……はぁ……」 「ヒルダさん、どうかしたんですか?」 深いため息をつくヒルダに、アニーが問う。 「なんでもないわ…………ふぅ……」 なんでもないと言って、またため息をつくヒルダ。 彼女の頭の中は、ティトレイから聞いた話でいっぱいだった。 イーフォンの試練の話を聞いた時、ティトレイは言っていた。 ヒューマというだけで、ガジュマに姉を殺される幻覚を見せられ、それでも彼はヒューマとガジュマは共存できると信じた。 姿かたちではなく、『気持ち』が大事なんだと。 アイツに聞かせてやりたいわね。 王の盾時代に、彼女がハーフという理由だけで、好かれる事すら迷惑だといった男の事を思い出すヒルダ。 アイツがもし、ティトレイみたいな考え方の人間だったら……? 「……ふっ」 意味のない妄想をしている自分に気付き、ヒルダは自虐的な笑みを浮かべる。 なんとなく暗い雰囲気を漂わせるヒルダに、アニーはわけもなく、何か言わなければという脅迫観念にとらわれる。 「……そういえば最近、ヒルダさんとティトレイさん、なんか仲がいいですね。もしかして……」 「……!」 「アニー、お、おまえ、何言いたいんだよ……!」 出来るだけ何気なく、他愛もない話題を。 アニーがそう心がけて振った話題に、ヒルダは内心驚き、たまたま近くにいたティトレイは過剰に反応する。 「あっ、ティトレイが焦ってるぅ!アヤシイ、アヤシイぞぉー!」 同じく近くにいたマオが調子に乗って茶化しだす。 「悪いけど、私、年下には興味ないから」 場の雰囲気的に、つい心にもない事を言ってしまうヒルダ。 「な、お、俺だって、お、おばさんには興味ないぜ」 「……本気でぶつよ」 売り言葉に買い言葉。 平凡なドタバタのうちに、そんな話題は幕を閉じた……。 「……私に話って、何?」 ヒルダは宿屋の一室で、目の前に立つティトレイに話しかける。 パーティが一旦ラジルダへと戻った時、ティトレイの方から『話がある』と声をかけてきたのだ。 ……ああ。 心の中で何かに納得するヒルダ。 この嫌な感じ……あの時と同じだわ……アイツにふられた時と……。 過去の忌まわしい記憶が現状とダブる。 「いや、まあ、その……なんだ、あれだ、悪かった!」 だから、彼女はティトレイの言葉を理解する事が出来なかった。 「……何の事?」 「だから、さっきはマオの奴が茶化したりするもんだからさ、言い過ぎちまったな、って。ホント、すまなかった!」 両手をあわせ、心底すまなそうな顔で謝るティトレイ。 目を固く閉じながら『反省!!』なオーラを滲み出させている。 彼女は黙って、しばらくその姿を見つめる。 「……っ、ふふ、ふふふっ」 「……?」 不意の笑い声に、ティトレイは片目をそっとあけてみる。 そこには、口元に手を当て、大笑いしそうなのを堪えるヒルダの姿があった。 「あ、ははっ、呆れた……あんた、そんな事気にしてたの?」 「そ、そんな事っていうけどな、俺ぁ本気で悪い事したなぁ、って思ったからこうやって謝ってるんだぜ!」 バカにされたとでも思ったのか、必死に自分の気持ちを主張するティトレイ。 「別にいいわよ。私だって冗談だったんだから」 ヒラヒラと手を振りながら、軽く答えるヒルダ。 が、ティトレイはその言葉に目を輝かせる。 「えぇっ!!って事は、年下もOKって事なのかっ!?」 「……?……それって……?」 「だぁかぁらっ!俺と付き合えるってとっていいのか?」 意味を酌みきれないヒルダに、ティトレイはストレートな物言いをする。 かつて経験のない事の運びに、ヒルダはみるみる頭に血が上るのを感じる。 まあ、見た目は別に問題ないし。この男なら、きっと本心からそう言ってるんだろうし。 けど、いい、って言ったらもしかして付き合う事になるの? そんな、急に決まっても……初めて付き合うんだったらもっと……。 「……そう言うあんたはどうなの?年上と付き合える?」 返事を考えるより先に、精一杯の皮肉な口調でそんな言葉が口をついて出てしまう。 「チッチッチッ。質問に質問で返すのは感心できないなぁ」 「なら、この話は無しね」 ふざけるティトレイに、また心にもない言葉が出てしまうヒルダ。 忌み嫌われる事こそあれ好かれる事などなかった彼女は、照れや不安・緊張といったものに完全に支配されてしまっているのだ。 「わわっ、冗談だって!……俺は、ヒルダと付き合える、いや付き合いたい!」 一転、ティトレイは真剣な面持ちで告白する。 「……言うだけならどうとでも言えるわ。気持ちに関係なく、ね」 そう、今の私のように。 「じゃ、一体どうすりゃいいんだ?」 「そうね……ちゃんと態度で示してみなさい。あんたの気持ちが私にしっかり伝わるように」 そうすれば、いくら私だって……。 「……わかった」 言うと共に、ティトレイはヒルダに近づく。 彼女の中で、淡い期待と、ここから一気に全てを覆されるかも知れないという恐怖がない交ぜになる。 ティトレイは無言で彼女の頬に片手を添える。 そのまま首へと腕を回してキスを。 いつの間にか瞳を閉じていたヒルダは、唇の感触にビクリと体を震わせる。 が、ティトレイは彼女の腰にも手を回し、更に深いキスを交わそうとする。 もう、十分わかったから! そう言いたい彼女はしかし、指先ひとつ動かす事が出来ない。 舌が、彼女の唇を割って口内に入り込む。 生暖かく、ヌルヌルした感触が舌の上や口の中を這い回る。 ただのディープキスに痺れるような快感を覚えながら、ヒルダはモゴモゴとぎこちなく舌を這わせ返す。 「んう、ぅん、んんっ」 くぐもった声を上げ、口の中いっぱいに溜まってきた唾液を嚥下する。 頭がぼぉっとし、何も考える事が出来ない。 知らず、彼女の腕はティトレイの体に回っていた。 互いに、優しく舌で愛撫しながら、チュッ、チュッ、と何度も唇を吸いあう。 「……あぁん……」 強く抱きしめられながらのキスに没頭していた彼女は、ティトレイが唇を離したのについついもの欲しそうな声を上げる。 「ヒルダ……このまま、いいか?」 既に、何か固いモノが自分の腰に当たっているのに気付いていた彼女は、はやるティトレイを諌める言葉を知らなかった。 「……好きにすればいいわ……」 冷たい言葉も、情感溢れる声では扇情的になる。 ティトレイは、そのままヒルダをベッドまで運んで横たわらせる。 そこで初めて、彼女は自分の腰が砕けているのに気付く。 「……ターバンだけは脱がさないで」 彼女は、幾重にも重なる服を器用に脱がせ出すティトレイに懇願する。 ティトレイは無言で頷き、それ以外を全て脱がせ終えると、彼女の胸にむしゃぶりつく。 「あぁは、っあぁ!」 自分の胸の上を這う舌や指の感触に、彼女は激しく息を荒げて声を上げる。 初めて味わう他者からの愛撫のひとつひとつに、達さんほどの快感を覚え、ヒルダの体はビクビクと大きく痙攣し続ける。 胸を揉み、乳首をくすぐり、舌を腹に這わせながら次第に顔を彼女の秘部へ移動させるティトレイ。 「……!?そんなっ、とこ!」 いきなりクリトリスを舌で弄られ、悲鳴に近い声を上げるヒルダ。 ティトレイはそれを気にとめず、そのままクリトリスを舌で弄ぶ。 「っぁ……きたない、わよ……んぅう、ぁあ」 「汚くなんかないさ。それに、気持ちいいだろ?」 喘ぎながらも恥ずかしがる彼女に、ティトレイはしばし顔を離して答える。 そしてすぐに、ピチャピチャという卑猥な音と共に秘部を舌で愛撫しだす。 「んん……っ、ぁ……んんぅっ!」 自分の指でするのとは違う快感に延々と襲われ、今度は本当に達してしまうヒルダ。 ずっと緊張していた体から力が抜け、ベッドの上でグッタリとする。 「そろそろ……いいだろ?」 そんな彼女の足を広げ、グッショリ濡れた秘部に怒張したペニスをあてるティトレイ。 返事を待たず、彼のペニスはゆっくりと彼女の中へと侵入していく。 「かはっ……っ!!」 脳を貫くような強烈な快感と、それに勝るとも劣らない焼けつくような痛みが彼女を襲い、声にならない悲鳴を上げるヒルダ。 ティトレイはペニスを根元まで挿し入れ、そのままじっと彼女の中の感触を味わう。 「……いいわ。少し痛みがマシになってきたみたい」 いつまでも、もうずっとそうしておくつもりなのかと思うほどじっとし続けていたティトレイは、彼女の言葉を聞くとゆっくり腰を動かし始める。 「っ……あ……くぅ、はぁ……いい、わ」 熱いペニスが彼女の中をゆっくりと擦り、気のせいなのか次第に痛みよりも快楽が勝りだす。 ティトレイはヒルダを抱きしめ、段々激しく腰を動かす。 彼女もそれにあわせて腰をふり、激しく体が揺れる。 「ぅあ、あぁは、ぅん、きもちい、ぁは、あぁっ、あん、っくふ」 声が自然と漏れ、二人は一層強く抱きしめあいながら何度も何度もキスを交わす。 「っく!ヒルダ、イくぜっ!!」 彼女の胸が押し潰れるほど強く抱き寄せ、一際強くペニスを奥底へと突き上げる。 グプッ、グプ、ブビュッ たぎる精液が彼女の中に吐き出される。 「んぅあはっ!!」 灼熱のように内を焦がす精液にヒルダは快楽の波に呑まれ、眼前が真っ白になるのを感じた……。 「……結構、良かったわ……」 ティトレイに体を預けたまま、ヒルダが言う。 「だろ?俺の気持ち、ちゃんと伝えたんだからな。ま、当然かな。さて、今度はお前の気持ちもみせてもらわないとな」 「どういう事?」 「その頭の布、俺の前だけでいいから取っててくれよ」 彼女の頬を撫でながら言うティトレイ。 「ふふっ」 彼女はティトレイの手を顔から離す。 「あんたのそういう強引なところ……嫌いじゃないわよ」 ヒルダはそう言って、笑いながらターバンをスルリとベッドへ落とした…… |