涙を拭いて



スタン達の活躍によりミクトランの野望は阻止された。
地表に落ちようとしていた外殻もソーディアン達が文字通り命をかけて破壊したが、その破片はなおも地表へと降り注いでいる。
彼らをのせた飛行竜はその間隙をぬって飛行を続ける。
この騒乱で払われた犠牲はあまりに大きかった。
しかし、ほとんどの人が知らないだろう。
この一連の事件の中、もっとも心傷ついた者が誰だったを。

「なんだ、こんなところにいたのか」
飛行竜の中、スタンは倉庫の薄暗がりの中で一人膝を抱えて座っていたルーティを見つけ、声をかける。
「明かりもつけないで何やってるんだよ?」
「……いいじゃない、ほっといてよ」
膝の間に顔をつっこみ、彼女はそのまま動こうとしない。
「ほら、一緒に上に行こう。……つらいのはわかるけどさ、ソーディアンを失ったのはみんな同じなんだし……」
スタンがそう言うと、彼女は突然跳ね起きて彼を睨みつける。
「よくそんな事言えるわね!?あんたなんて田舎から飛行竜に密航して、たまたまソーディアンを手に入れただけじゃない!」
「そ、それはそうだけど……」
「あたしとアトワイトはね、そんな短い付き合いじゃなかったのよ!それに、それに……!」
彼女は、スタンの胸を両の拳で何度も殴りつけながら話す。
その既に泣き腫らしている目からボロボロと大粒の涙を流しながら。
「自分の父親が世界を滅ぼそうとしていて、弟もろとも自分達の手で倒さなくちゃいけなかったなんて!そんな気持ちがあんたにわかるって言うのっ!?」
殴りつけていた彼女の手が止まり、その胸の辺りの衣服をギュッと握り締める。
「あたしは……っ!」
それ以上は言葉にならず、彼女はスタンの胸に頭を押し当てて泣き出す。
スタンはそんな彼女をそっと抱きしめる。
いっそ何も知らない方が良かったろう。
世界破壊を企むヒューゴが彼女を捨てた父だった事を。それと行動を共にするリオンが実の弟だった事を。
しかも、ヒューゴはミクトランに操られ、リオンは全てを知った上で大切な人を守るため、死んでいったのだ。
「……ごめんね……ちょっと言い過ぎたわ……」
スタンの腕の中で、まだ肩を震わせながらルーティが謝る。
「いや、俺の方こそごめん」
「……別に気にしてないわよ。あーあ、泣いたらなんか吹っ切れちゃった」
彼女はスタンから体を離し、涙を拭く。
「ほら、いつまでつっ立ってんの?上に行くんでしょ。みんな待ってるんじゃないの?」
「あ、あのさ」
歩き出そうとするルーティをスタンが呼び止める。
「もし良かったら、これが終わった後ももう少し一緒に……」
以前グレバムを倒した時に、途中でフィリアに邪魔されたセリフを言おうとするスタン。
しかし頭を振ってその言葉を中断し、言い直す。
「これが終わっても、ずっと一緒にいないか?」
「……はあ!?なにそれ?」
「な、なにそれって言われても……」
「もしかしてそれって……プロポーズかなにかのつもり?」
「え、まあ、一応……」
「あんたってホントにバカ正直よねぇ……」
スタンの返事に、ルーティは大げさに首を振ってみせる。
「あ。も、もし嫌だったら別にいいんだ」
ルーティの様子から、スタンは慌てて取り繕おうとする。
「その程度?」
「え?」
「あんたの気持ちはその程度なのか、って言ってるのよ」
彼女に逆に問い詰められ、スタンはオドオドする。
「あたしだったらこんな状況、相手を一気に押し倒してるわよ」
ルーティの言葉に、赤面するスタン。
「まだ言ってる意味がわからない?」
「え?」
「押し倒してって言ってるのよ……その気持ちがホントなんだったら」
彼女はじっとスタンを見つめる。
いつもの悪ふざけをしている瞳ではなかった。
「……ルーティ」
スタンは、その瞳に吸い寄せられるかのように彼女に近づく。
その両肩に手をあて、言われた通り一気に押し倒す。
「ったた……もう少し優しくしなさいよっ!」
床にぶつかって文句をつけるルーティにも取り合わず、スタンは憑かれたように彼女の服を脱がせ出す。
といっても、ショルダーガードに繋がるベルトを外し服を少しずらすだけで、彼女の胸は簡単にむき出しになる。
露わになった乳房を揉みしだき、その先端に舌を這わせる。
ベットリと唾液の跡を残しながら、乳首から乳房、腹部へと舌を這い進ませる。
「んんっ、もう!そんなに焦って、ん、しなくても」
片手で彼女の腕を掴み、片手で唾液に濡れた乳首を弄びながら、スタンは下腹部あたりでくすぐるように舌を動かす。
彼女は生暖かくヌルヌルした感触に身悶えし、スタンの体の下でモジモジと足をすり動かせる。
スタンは彼女のホットパンツを脱がせ、ルーティの秘部に舌を這わせる。
全体を舐め回し、割れ目へと舌を差し込む。
クリトリスを指で弄りながら、トロトロ溢れ出す愛液をわざと音をたててすする。
「やっ、バカ……ぅあ、そこ、ぁん、そう……いい、わ、ふ」
スタンの行為に最初は文句をつけたものの、彼女は次第にスタンの愛撫に没頭し始め、舌の動きに合わせて全身を震わせしきりに舌なめずりを繰り返す。
両手で彼の頭を押さえ快楽に身を震わせる彼女の肌は、既に全身が朱に染まっていた。
「ぁは、く、ねぇ、も、そろそろ……」
熱い吐息を吐きながらルーティがねだり、スタンは頭をあげてそれに応える。
ズボンを脱ぎ、猛るペニスを彼女の秘部へと押し当てる。
「っあは……く、ぅう」
ズブズブと体内へ侵入してくるペニスの感触に、彼女は声をあげる。
蜜のように粘質な彼女の内部がペニスを優しく包みこみ、ヒクヒクと小刻みに震えながら強く締めつけ出す。
「うあ、スゴ、ぅく……っふ、ね、動いて、あたしの中、グチャグチャにしてっ」
艶かしく腰を動かしながら、ガラにもなく懇願するルーティ。
言われるまでもなく、スタンも腰を動かしだす。
ペニスが彼女の中を擦りあげ、溢れ零れる愛液が卑猥な音を立てる。
「やはっ、くふ、スタンの、が、グリグリって、あん」
突き抜けるような快感に、ルーティは激しく腰を動かして更なる悦楽の中へと没入する。
「あぁ、そう、いいわ、やん、もっと激しくして、っあ、いい、いいの!」
彼女はスタンをひっしと抱きしめ、絶頂が近いのか彼女の中は一層きつくペニスを咥えこむ。
半身が溶け合ったかのように痺れるような快感が2人の下半身を覆い、意識に霞がかかる。
「ああっ、スタン!」
「くっ!ルーティ!」
2人は同時に声をあげて絶頂に達す。
彼女の中が、ドクドクと溢れ出す精液でいっぱいに満たされていく。
しっかりと抱き合ったまま、2人は法悦の中に意識を失った……。

「あのさ、ずっと一緒になるっていうの、やっぱりちょっと待ってくれない?」
ルーティが、スタンに寄り添うようにしながら話しかける。
「え?なんで?」
「あんまりにもたくさんの事が一度に起こり過ぎててさ、あたし自身まだちょっと混乱してると思うのよね」
「……うん」
「でさ、世の中がもっとちゃんと落ち着いてから……それからもう一度返事してもいい?」
彼女はおずおず、といった感じで問いかける。
「……わかった。それでいいよ」
「え!?ホントにいいのっ?」
「ああ。ルーティが人の言う事聞かないのは、もうよーくわかってるから」
「へぇぇ。田舎者のくせに聞いたふうな口きくじゃない……このお人好し」
言って、彼女はスタンにキスをする。
少し涙ぐんでしまったのを気付かれないように。
そして彼の耳元でルーティは囁く。
「大丈夫。どうせ答えは決まってるんだから」



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