デジカメ



「あんな、話があんねんけど」
「?」
速水は突然加藤に呼び止められた。普段あまり話したことがないのでつい返事は出来なかったが。
「こんなんあるんやけどぉ」
そう言って加藤は1枚の写真を速水に渡す。
「これが、なにぃっ!?」
それは、尚敬高校の調理場兼食堂の写真だった。特におかしい所は見当たらない。
 ただ速水の手が、抱きついている芝村の服の中に突っ込まれているシーンが写っているだけである。
「どどどどうして?あの部屋には僕達2人しかいなかったのに!?」
「部屋の中は2人でも窓がある事忘れたらあかんで。でもってぇ、こんなもんとかもあるんやけどぉ」
加藤はさらに数枚の写真を取り出す。
そこには
「わーっ!わーっ!わーっ!」(速水)
なシーンが写っていた。
「ちゅうわけでぇ、そのメモリースティックなんぼで買うてくれる?」
「ううっ」
かくて速水はレールガン一台分程の代金を加藤に支払った。
「おおきに、おおきに。またよろしゅうに」
言い残し、加藤はさっさと消えていった。

加藤祭。ある時はみんなで撮った写真と金の延べ棒を交換し、またあるときは前述のような手段で大金を手にし、狩谷の足を治せるという(やぶ)医者への支払いを行ない続けている。
そして今日も獲物が一匹……

「あんな、話があんねんけど」
「なんでスか?」
加藤の次のターゲットは小杉であった。
「こんなんあるんやけどぉ」
加藤は写真を1枚渡す。これを撮るために、昨日は4時間以上も倉庫に張り込んだのだ。
だが、小杉の反応は予想外のものだった。
「ワオ。ワタシきれいに撮れてるデスネ?コレ、くれるのデスか?」
その写真は、半裸の小杉と(もとから)半裸の来須がそれチックな雰囲気になっているものだった。
小隊屈指のナイスバデーな小杉と、同じく小隊屈指の肉体派・来須である。滝川あたりならばこの写真だけで大福死ものの一品である。
「あ、あとほかにもあるんやけど」
加藤は残る数枚も一気に渡す。
「全部きれいデスね。ありがとです。ワタシこれ大切にしますネ。皆、ワタシに親切です。ワタシとても幸せネ」
小杉は写真をすべて受け取り、加藤を抱擁すると去っていった。
「…………んなアホな」
呆然とたたずむ加藤。
げに恐ろしきは天然であった……



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